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「有限と微笑のパン」読了。
こんな敗北感と無常感は初めてかもしれない・・・

確か読み始めたのが去年の夏ごろだったと記憶しているので、随分と長い時間をかけて読み進めて来たわけですが・・・
これまでの「S&M」シリーズの集大成には相応しい、遥かに衝撃的な作品でありました。
・・・或いは、これを読む段になってはじめて、私が漸く森博嗣の思想の深奥を理解できる場所まで達することが出来たのか・・・

以下、本編を読んだうえで読まれる事を推奨。
「ネタばれ」というほどの事は書きませんが(そもそも森博嗣の小説において、「ネタばれ」なんてものはほとんど意味を持たないと思われますし。)
たぶん、本編を読まれたうえでないと、私の言わんとするところは理解していただけないと思います。
・・・まぁ、「理解してもらえない」というのは、(この場合では)完全に私の能力不足のせいなのですが。

+ + + + + + + + + +
「現実」と「虚構」ということに対するテーマも、大変興味深かったのですが・・・それについての考察は後に譲るとして、何よりも衝撃を受けたのは、以下の問題。

装飾。「本質」以外の全ては装飾。
文系人間であるところの私の文章や思想、行いにはとみに「装飾」が多い。それは、本質的には不要なもの。
その「装飾」を切り捨てることにより達することの出来る境地。
それが森博嗣の文章であり、思想であり、彼の世界なのでしょう。
・・・ぼくにはとてもできない。

装飾を放棄し、本質のみをシンプルな論理で追い求めた地平。
美しい、論理の地平線。
その世界の住人である、「天才」真賀田四季博士・・・
この人もイデアですね。
「天才」「美」そして「真実の人間」と言うイデア。
完璧な論理の上に立つ、完璧な人間・・・

その完璧なイデアが、論理の外にあるものを・・・
取るに足らない混乱のようなものでしか過ぎない「不条理」
その不条理を「綺麗だ」と言った。

・・・そんなこと知ってるさ。
論理を外れた「不条理」が綺麗だなんて、皆知ってる。
陳腐な三流の物語にすら、そんな言葉は出てくる。

しかし、知っているだけで・・・その意味をきちんと「理解」している人が、一体どれだけいるでしょうか。
そして、「論理」というものの深奥を垣間見た上で、それでも不条理を「美しい」と言える人が、一体どれだけ・・・

勝てないなぁ・・・すごい敗北感だ。
その地平、私は果たしてたどり着けるでしょうか。
まぁ、たどり着けるように足掻くしかないんだけれど。

しかし、「論理によって本質的な解を得ることは出来ない」なんて事を知っていて、論理を学ばねばならないなんて・・・
ネタばれされたゲームを攻略するかのごとき徒労感ですよね・・・はぁ。

しかし、本当に森博嗣の小説はすごい。
推理小説・・・ミステリーなんてほとんど読んだ事の無い私ですが、それでも言える。
こんなもの、もはや推理小説じゃない。
或いは、広義敵な「ミステリー」と言うものの新たな地平線が示された、とでも言うべきか。

だってまさか、殺人事件の動機が「瑣末事」として一切示されず、それで読者に納得させてしまうなんて・・・
やっぱ、森博嗣は天才だわ。
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